#2 想像力
あなたはマーマレードから何を想像するだろうか。
朝からマーマレードを作っている。
年末から年始にかけて洗濯かごがいっぱいになるくらいのみかんをもらった。
そのうちいくつかの色が黒く変わって柔らかくなってきたので今朝布団の中でマーマレードを作ることに決めた。「みかん切って砂糖と煮る感じっしょー?出来上がったらケーキとか作っちゃお♪」みたいな(かなり)安易な気持ちで。
今ならわかる。
これは完全な間違いだった...
農薬とか落とすために皮をよく洗って皮と身を分離する。ここまでは良かった。
そのあとみかんの白い皮を剥くんだけど、この作業がなかなか時間がかかる。まず皮から剥がした身の周りの皮をはがす。ちょっとだけめんどくさいけどできる。
そのあとに皮の内側についている白いやつをできる限り包丁でこそげとっていく。これが大変。
包丁についた白いやつを外しながら、皮がちぎれないくらいの力加減で2玉の薄皮を出来る限りとっていく。途中で目に果汁攻撃とかを受けながら。もうこの時点で天ぷらをあげるとかよりめんどくさい。
「え、マーマレード作ってる人こんなことしてるの?えらいじゃん...」という気持ちが湧いてくる。
これで終わりではない。
白いやつを取った皮を3分茹でるのだ。それを3セット。
そしてそれをさらに10分水にさらす。
その水を切って身と砂糖と混ぜて30分置く。そこでやっと火にかけることができる。
これだけ手間がかかっている。オレンジマーマレードは。これだけの時間をかけて、彼女は主役ではないのだ。何かを作ってそこに添えるもの、なのだ...
私は知った。
これまで何も考えず食べてきたオレンジマーマレードにかけられてきた手間隙を。機械だとすれば機械が代替してきた我々の労働力を。こういう風に人は時間のかかる何かを外部委託することによって自分に使える時間を作り発展してきたのかと。
私は知った。
オレンジの皮を茹でているときのいい香りや、3回茹でて水にさらしてもなお出るオレンジの色素のたくましさを...
そのことで、私にとってのオレンジマーマレードの存在は、これまでと違うものになった。
現代は食べ物でもそれ以外でも完成されたものが多いけど、自分でやってみることが人の想像力を育てるのかもしれないなあと、マーマレードを煮込みながら思っているのでした。
もうしばらく作ることはないかもしれないけどありがとう、マーマレード。