KARUISHI

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コンクリートの壁にかこまれて、沖から海水が流れ込み、そして出ていく自然と人工の間、漁港。そんなあわいのさらに境目、人工側のコンクリートの先っぽに座る私、の姿は後ろから射す強烈な太陽光(痛い)に照らされて濃緑色をして細かいちりや軽石と一緒にぷかぷかと浮いている。あるいは沈んでいる。コンクリートの壁に守られた穏やかな揺れの中で。海の中に佇む濃緑の私が、あるいは本当の私かもしれないことを誰が否定できるだろうか。私に見えている私はあちらの私で、こちらの私は一生本当の意味で私から見えることは無いのだから。みんなだって、実際私ではなく光を見ている。反射する光。だから、私は光や影なのかもしれない。認識される者としての私。認識する者としての私も、厳密には私ではない。家族、友人、先生、たくさんの他者の思想や言葉で構成される流動する容れ物。私の中の私たちは、壮大な物語の織り込まれたカーペットのようだ。色や形が変化し続けるカーペット。きっと見飽きることはないだろう。海の中の濃緑の私の色が薄くなっていく。コンクリートの影と合わさって波に溶けていく。その上を2匹の魚が泳いでいく。軽石が揺れている。

浮かぶ軽石を1つ、欲しいと思った。