#58 夜

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「#58 夜」

 

その夜は雨が降った。
空はそんな様子一つも見せずに、バケツに少しずつ溜まっていた水を急にひっくり返したみたいに雨を降らせた。

 

電気を消して布団の中で聴く雨の音は心地よかったけれど、ペンギンのことが気にかかった。

 

あのペンギンは無事北海道の動物園まで、子どもたちの元へ帰れるだろうか。雨で体が冷えたり泳ぎにくかったりしていないだろうか。風はないから波は多分大丈夫だろう。

 

ペンギンの泳ぐ夜の海のことを考えた。陸地の見えない真っ暗な海。それは海以外ない、ただただ、海。泳ぐのをやめたら沈んでしまう。寄る辺なく黒しか見えない海を泳ぎ続けるのはきっとすごく大変なことだ。


#58
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