両手の無い少女の話
この手は●●●内戦の時に、日本軍が受けたテロの報復攻撃で失ったのよ。あなた、●●●は来たことあるかしら。
両手の無い幼い少女は憎々しげな目をこちらに向けて言った。
私はない、と答えた。
すると彼女はパスポートを見せろと言った。
パスポートなんて持っていない、と私はいい、自分の鞄をさぐった。
するとあったのだ。たまたま。
どうしようもなくパスポートを取り出したが、行った記憶のないその国の名前が入っているはずがない。ペラペラとページをめくり、彼女に確認をするよう差し出した。
その時見つけてしまったのだ。ページの間にその国の言葉を。もしかしたら行ったことがあるのかもしれない。
しかし私は全く知らないという顔を崩さずにパスポートを差し出した。
そんなものを見ても無駄だと思ったのだろう。彼女はパスポートを見ずに立ち去った。
その後しばらくしてまた彼女とすれ違った。その時私は、両手のことに私は直接関係はないが、日本国民としてそのことを本当に申し訳なく思っていると彼女に告げた。
彼女の表情は覚えていない。
という夢を見た。