蜘蛛

大きな蜘蛛が大きな巣をつくって
空中に浮かんでいる
黄色と黒のからだ
本能が近づきすぎるのは怖いといっている

見る木見る木に蜘蛛が浮かぶ
「夏だなあ...」と無意識が言う
蜘蛛が苦手な彼に話そう
いっぱいいたよって
きっと辟易するだろう

 

そういえば、この蜘蛛
昔の彼と一緒に見たな
夏の阿嘉島
あそこの蜘蛛も大きかった
青い空にゲストハウスのシーツがはためく
海に太陽がきらめく
幸せな時間
彼も蜘蛛が大嫌いだった
唯一蜘蛛を見ると私の後ろに隠れた

 

悪いことをしたな

 

大きな蜘蛛のなかに
蜘蛛の苦手な彼と彼が
つながる

 

きっとこの先 一生出会うことのないであろう
彼ら