#54 トマトソースパスタ

f:id:tusensommar0408:20210228212121p:image


ペンギンはトマトソースパスタを美味しそうに食べた。

よっぽどお腹がすいていたのだろう。 お皿のパスタはあっという間になくなった。


「もしよければまだ残っているけど、お代わりしますか?」


「え!そんな、いいんですか?いや...そんな急に押しかけて、 こんなにしてもらって申し訳ない...」


そう言いながらも、ペンギンの目は宙を泳いでいた。


「もしよければ食べてくれませんか?私ももうお腹いっぱいだし。 ご迷惑でなければ、ですが」


「本当ですか?!では是非、有難く頂戴いたします」


「 自分が作ったものを誰かにそんなにおいしそうに食べてもらえるな んてそうそうないから、嬉しいです」


「こんな絶品のトマトソースパスタ、食べたことがありません。 オレガノがよく効いている」


「ありがとうございます。ペンギンさんはグルメなんですね」


「北海道は美味しいものが多いですから。 たまに動物園を抜け出して食べに行くんです。海鮮丼とか」


「なるほど」


突然の来訪者は、二杯目のパスタも美味しそうに食べ始めた。


「それで、ご用はなんでしょう?」


「そうそう、パスタがあまりにもおいしいので、 大事な用を忘れるところでした。実は、 私はメッセンジャーなんです」


メッセンジャー


「はい、メッセンジャー。メッセージを受け取り、 メッセージを伝える。動物園のアイドル以外の私の仕事です」


「なるほど」


「私はあなたにある重要なメッセージを預かって来たんです。 風がそのメッセージを運んできました。 あなたは物語を探さなければなりません。」


「物語」


「そうです。物語です。 その物語は我々の存在にとってとても重要なものです。しかし、 その物語が何者かに狙われているのです。今のところ、 物語はまだ奪われてはいません。 奪われれば私たちは分かるはずですから。しかし、 奪われる前にあなたが見つけなければならない」


「そもそも物語は奪われるものなのでしょうか。 形ないものをどうやって奪うことができるんですか?それに、 どうやって見つけることができるんでしょうか」


「それは私にはわかりません。 私はただのメッセンジャーですから。伝えることが仕事です... はっ。いまは何時でしょうか?」


「夜の9時過ぎです」


「なんと!早く帰らなければ。 私には動物園のアイドルという重要なお仕事があるのです。 子どもたちが私を待っているのです」


信じられない程のスピードでパスタを平らげ、 ペンギンはもう一度言った。


「いいですか、物語です。あなたは物語を探すのです。 美味しいパスタをありがとうございました。 このご恩は忘れません。 よいペンギンは美味しいごはんの恩は忘れませんから。 それでは失礼します」


そういってペンギンはぴょこぴょことしかし足早に去って行ってし まった。


一体あれは何だったのだろうか。私は夢を見ているのだろうか。


部屋に戻ると、テーブルの上に空のお皿が2つぽかんと乗っていた。

 


#54

#毎日何かを書いてみる

#ペンギン

#トマトソースパスタ