食べるように読む

特に理由はないけど、よしもとばななさんの作品を食べるように読んでいる感覚をずっと持っていた。 ある辛い時期、仕事をしている時間、ご飯を食べている時間、お風呂と寝ている時間以外はずっとよしもとばなな作品だけを摂取し続けていたことがあった。仕事…

ことばを持たない者たちの物語『ことり』『言葉の誕生を科学する』

人間がことばを手に入れたことで失ったものは何だろう。 恐らく、ことばを手に入れたことで人間だけが過去と未来、そして死について思いを馳せることができるようになった。自分、というものを自分で考えることができるようになった。 そしてそれと引き換え…

クソの美しさ ~どうして私は菊次郎を嫌いになれないのか~

夏になってから久石譲のSummerを聴くことが増えて、それで北野武の『菊次郎の夏』を観た。 両親のいない少年が、夏休みに近所のおじさんと一緒に母親を探しに行く話。 このおじさん(菊次郎)が、気持ちいいほどのクズ。 菊次郎の奥さんは、母親に会いたい少…

(本)裸足で逃げる~沖縄の夜の街の少女たち~

裸足で逃げる~沖縄の夜の街の少女たち~ 上間陽子 「私たちは生まれたときから、身体を清潔にされ、なでられ、いたわられることで成長する。だから身体は、そのひとの存在が祝福された記憶をとどめている。その身体が、おさえつけられ、なぐられ、懇願して…

(本)ナインストーリーズ(不器用を掬い上げる本?)

ナインストーリーズ J.D.サリンジャー作 柴田元幸訳 ※微妙なネタバレ有です。 一作一作がとても面白い短編集だった。世の中に対する憤りや人間関係のフラストレーション、そういうものが善悪とか既存の社会の論理を外した状態でそのまま描かれる。(とっても…

(本)ビッグ・クエスチョン—スティーヴン・ホーキング

私は高校生の時にちょうど未履修問題のあった世代で、しかも英語系の学科だったから、科学と物理の授業を全く受けたことがない。だから、「すい、へーりー、べー」というやつも、それ以降分からない。 この本は、「博士と彼女のセオリー」で有名なホーキング…

手間をかけることについて(王子様とキツネ)

高校時代に星の王子様を読んで、大好きになった。 日本語版だけじゃなくて英語版を読んだり、ミュージカル映画版をみたり、グッズを買ったり、好きすぎてフランス文学を専攻しようとしたりして(結局英米文学にしたけど)、とにかく好きだった時期があった。…

(本)お父やんとオジさん

「私には難しいことはわかりません。共産主義が人を幸せにするのか見当もつきません。しかし共産主義よりも民主主義よりも大切なのは家族じゃないんですかね。戦場で君が何を見たのか、私には想像もできません。しかし人は人を殺すために生まれてくるのでも…

(本)サピエンス全史

最近、「サピエンス全史」という本を読んだ。 一般的に「歴史」と言えば文明以後の世界や国、地域の流れをさす(様な気がする)けど、「サピエンス全史」では私たちホモ・サピエンスという種の誕生から狩猟時代、農耕時代、そして現代にいたるまでの生物の歴…

(本)「アラブの春」の正体—欧米とメディアに踊らされた民主化革命

おととし、中東について3本の映画を観ました。 一本目は「もう一人の息子」。イスラエルとパレスチナの間で取り違えられて育ったことが分かった子どもとその家族がその事実と向き合っていく様子を通して、家族の絆、個人的な愛は宗教的政治的な葛藤を越えら…